何時の間にか
廻っていたのね・・・

この世に生を受けた時から決まっていた
運命の歯車



















ENDLESS KILLNESS
[番外]




〜What minces a time.〜

















 さて、これは僕である彼と私である彼女の
遠くて遠い近くて近い物語。

 何が遠くて、
 何が近いのか。
 それは、
 空かもしれないし、
 地かもしれないし、
 時かもしれないし、
 君かもしれないし、

 心かもしれない・・・。









「今日は何処へ?」
「…分かっているでしょう?」
「えぇ、まぁ。」


 苦笑して、彼女に話し掛ける彼。
そこは、薄暗い部屋だった。
白い白い部屋に光は薄暗く。
マンションのような その一室はリビングのようだった。
広くもなく狭くも無い部屋。
遠くもなく近くもない壁。

手を伸ばせば届く、君。


「それにしても、大きくて広い家ですよね、ココ。」
「普通、昨日まで敵対していた一人暮らしの女の家に住み込みますか?」
「仲間ですから。」


 にっこりと笑う彼。
彼女の顔には昨日のような笑みはない。
むしろ、ムスッとふてているような感がある。


「だいたい、一人暮らしじゃないでしょう。」
「似たようなものです。」
「まぁ、貴女に兄弟姉妹がいたとは思いもしませんでしたが。」
「神は意地悪です。弟、妹に私と同じ気持ちにさせて、何が神の意志ですか?全く理解できません。」


 彼女は向かい合って座る彼を眺める。
真剣に真剣な目で真剣な口調で真剣に話す。
 彼は彼女の目を見ても、戸惑わず躊躇いもなく、眼前にあるコーヒーを啜る。


「神には神の意志があるのですよ。」


 彼は笑まず、コーヒーを啜る。
彼女も眼前にあるカフェオレを口に含んだ。
ゆらゆらとゆれる白い湯気。
くっきりと映る二つの影。
 白い湯気は影の上を翳り、灰色の影がゆらゆらりと揺れていた。


「人間には人間の意義があるように。僕たちには僕たちの時間がある。僕たちは僕たちの時間の運命に流されて、するべきことをするだけのこと。」
「私たちには私たちの意味があると云いたいのですね。」
「ふふっ。まぁ、そう云うことになりますね。」


 犯死(オカシ)そうに笑う彼。
とても、とてつもなく、犯死(オカシ)そうに笑う。


「時間は私たちにとっては許されるべきであっても、肉となるものは許されない時間ですから、早くても遅くても生きるべきです。残された時間を生きることが人間の義務。」
「生きているのか 死んでいるのか 分からない 俺達には、人間を心配する意思なんて要らない。」
「…治良…起きていたの…?」
「間遠さん、姉貴を誑かさないでくれよ?ただでさえ惚れっぽいんだから。」
「ほぅ。そうなんですか。でも、大丈夫ですよ。僕はモノを愛でる趣味はありませんから。」


 ふわりと微笑む。
微苦笑(テレワラ)いでなく、苦微笑(ホホエ)む。
あまりにも綺麗に微笑(ワラ)う。
その姿を眺めるように彼女は見ていた。


「さぁ、時間ならたくさんある。」


 席を立ち、玄関のほうへ向かう。

シュルルル

シュルルル

 環貫を出し入れしながら。
生き物の尾のような動きをする、彼の武器(エモノ)


「行きましょうか、世羅さん。」


 彼女は弟に笑みを残し、彼のほうに向く。
その時にはもう、笑みという笑みはなく。
 只、冷たく
 只、遠く
 只、思わず
 只、哀しく
彼を眺めた。



 時はまだ残されたまま。
 僕らは見得ない次を目指して。




 無駄な時間は僕らのために
 有意義な時間は君のために


 僕は時の中を生きる。







20040207