「ぅえぇええええぇぇぇぇ―――――っ!!」
「……えっと……迷子……?」
[勇者と魔王5]
魔王の城へ乗り込む回数が、丁度10回目になった時、城下町・クリストで上から下まで徹頭徹尾で水色の女の子に出会った。
「泣くな!!」
「ぅぇ……」
「迷子?」
「……うん……なの……」
水色の女の子は涙目でコクリと頷く。
勇者は困惑した顔をして溜息を吐いた。
「うーん……親とか何処にいるとか分かるかな?」
「……分かんない……の……」
ふるふると首を振る水色の女の子。
勇者は益々困惑する。
「えーっと、じゃあ、名前は?」
「……アイス……なの」
「アイスちゃんか。可愛い名前だね。私は……劉だよ」
「りゅー……ちゃん……?」
「うんっ!」
にこーっと笑う勇者。
涙目で微笑むアイス。
「じゃあ、アイスちゃん、君の親の特徴は?」
「……背が高くて……」
「ふんふん。それで?」
「……黒味がかった眼と髪で……」
「ふ……ふんふん……」
「……右眼に眼帯してる」
「へ―――――。
ピンポイントで思い当たる人がいるんですが、その人じゃないことを願うよ。」
「……あの城にいる……はず……なの……」
「……えーと、正解デスカ?」
勇者は引きつっていて、自問自答している。
アイスは魔王の城を指差したまま、きょとんとしている。
「……えーっと、魏几の子供? 妻がいたのか、あいつ……」
「うぅん。違うの。ますたーなの」
「えーと、寵姫? ……あ、いや、気にしないで……」
勇者は勘違いをしている。
アイスは良く分からない顔をしている。
「まぁ、取り敢えず、連れて行ってあげるよ」
「有難うなの!」
パァッと明るい笑顔でアイスは勇者に抱きついた。
「おっとっと!……さて、行こうか」
――――魔王の城・マスティアル
「着いたよー。大丈夫?」
「うんなの! 元気なの!!」
やっと、魔王の城に到着。
歩いたので1時間掛かった。
アイスは浮いてたのだけれど。
「魏几……いるかな?」
魔王の城の中に入ろうとした時、後ろから嫌な気配がした。
勇者は剣に手をかける。
カツンッ
背後の気配が近づいた瞬間、勇者は剣を抜き、後ろにいた相手に勢いよく斬り付けた。
キィィイインッ
剣同士がぶつかって、勇者は弾き飛ばされた。
勇者は重力に引っ張られ、ドサリと地に落ちた。
「ふぅ……危ないな、勇者……」
「っ?! 魔王!!??」
魔王は、剣を
一本持っていた。
その隣にはさっきまで一緒にいたアイスがいる。
「ねぇ、りゅーちゃん……ぎーちゃんと敵なの?」
ヒュゥゥウウウゥゥウゥゥ……
「ぎーちゃんと敵なら、殺らなきゃ……」
3人がいる場所が急に寒くなる。
冷たい空気が立ち込めている。
「え……アイスちゃん……?」
「ぎーちゃんの敵なら……、消さなきゃ」
にっこりと嫌らしく厭らしく否らしく冷たく笑うアイス。
流石の勇者も戸惑う。
「アイス、違うよ。劉は
俺の
恋人だ」
「そっかぁ〜……。分かったの!敵じゃないの!!」
勇者に向けて放とうとしていた
氷球を消して手を下ろした。
「それでは、
アイはどろんなの!!」
そう言ってアイスは魔王の持つ、剣に附いている聖玉に入って行った。
「アイスちゃん、創精霊だったんだ……。っつーか、オマエの剣精だったのかよ」
「うん。俺に似て可愛いでしょ? 1人走りする性格がたまに傷なんだけどね」
「はー……。
絶対違う。魔王に似ずに可愛い」
「えーでも、俺よりも勇者よりも年上だよ?」
「え゛?!」
勇者はかなり吃驚した。
魔王はのほほんとしている。
「って言うか、『俺の恋人』って所にツッコミはなしかい?」
「敢えてスルー。敢えて
無視」
「わー、酷い」
何だか今回はのほほんで終了。
魔王の2本目の創精霊の登場はまた次回!
さ〜て、次回の[勇者と魔王]は
・勇者、魔王になる!
・魔王先生による、正しい世界征服。
・黒い影。黒い剣。呪いは御呪い☆
の、三本です。お楽しみにね☆
勇者と魔王4|
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勇者と魔王6
20040922