通算11回目。
魔王の城。
城の前には黒い男の子。
「キサマ、魔王の恋人だな?!」
「
……人違いです。」
[勇者と魔王6]
「な?! 完全に否定すんなよ!!」
「煩いなぁ……違うもんは違う。俺は魔王なんか好きじゃない」
「じゃあ、嫌いなのか?!」
「うん」
返答に要した時間:0.3秒。
ガーンという顔になる黒い男の子。
あっけらかんとする勇者。
ポヒュッ
勇者の剣に附いている聖玉(貰いに行ったらしい)から、緋色の眼と髪を持つ、紅い男の子が現れた。
「やいやい! 劉様に何、言いがかりつけてんだ! 劉様があんなヘタレのこと好きなわけないだろー!!」
「ヘタレって何だ! キサマなど、Levelが無いではないか!」
「何だと! 僕はちゃんとLevel、ちゃーんと授かったもん!!」
「何Levelだよ?」
「……33」
「ぶはっ!?」
ぎゃははははと黒い男の子は笑った。
フィアは唇を噛んだ。
勇者はのほほんとしている。
「子供は可愛いねぇ……」
「あはは。そうだね」
「いきなり出てくんな、ヘタレ」
「わー酷いなー。冷酷だー。酷いヒドイぃー」
神出鬼没なヘタレ魔王。
勇者は怪訝な眼を魔王に向ける。
「っていうか、あの髪の長い黒い男の子はダレだ?」
「んー? あぁ、俺の剣の創精霊。地舛莱闇のシアンだよ」
「へー。寵姫じゃないんだ」
「ねぇ、俺はそんなに節操なしに見えるの? っていうか、男の子にまで手は出さないよ」
魔王はしょんぼりとする。
勇者はうーんと悩んだ。
「うー……ヘタレに見える」
「へー、結局そこに戻るんだ」
魔王は
空の
空を眺めた。
勇者はつられて闇黒の
宙を見上げた。
シアンとフィアは、まだ口喧嘩をしている。
「ヘタレ魔王!」
「バカ勇者!」
「まぬけ魔王!!」
「あほ勇者!!」
「こしぬけ魔王!!!」
「ボケ勇者!!!」
「何の勝負をしてるの?」
ニッコリしながら2人の側による勇者。
魔王も勇者の隣でニコニコしている。
「「どっちがドレほどオチコボレてるか!!」」
ゴンッ
ゴンッ
「痛いですよ! 勇者様!!」
「痛いだろ、魔王!!」
「「自業自得だ!」」
勇者と魔王は声を重ねた。
「何だよ、ヘタレ魔王!」
「そうですよ、ヘタレ!」
「ヘタレッヘタレッヘタリストッ!」
「え? 俺だけ攻撃されるの?」
「「「だって、ヘタレはヘタレだもん」」」
今度は創精霊と勇者の3人が声を揃えた。
「え? 何で……」
「ヘタレは黙ってろよ」
「そうだぞ、魔王。黙ってろ」
フィアは黒さ満点だ。
シアンは魔王がウザくなってきたようだ。
「へ?」
「勇者:劉とフィアだな、入たく歓迎するぞ。な、アイス!」
「あいあ〜い」
ドロンっ
魔王の腰に挿してある水色の小刀から創精霊が出てくる。
「呼んだの、シアン?」
「あぁ、持て成すぞ。勇者だ」
「……一体何の話なんだ、アイスちゃん?」
「きゃあー! 劉ちゃんなのーー!!」
「うぉう!」
アイスは勇者に向かってボディ・アタックした。
「逢いたかったの! 前の時は劉ちゃんが直ぐに帰っちゃったからパーティ出来なかったでしょ?」
「とりあえず、狭いところだが、歓迎してやる。入れ」
「あのー、ちょっとキミたちー……」
「何なの? ヘタレぎーちゃん」
「アイスまでっ!!」
魔王は半泣きだ。
アイスは毒舌だ。
シアンは興味がなくなってしまっている。
フィアはさっさと城に入った。
勇者もさっさと城に入った。
っていうか、魔王、ファイト。
勇者と魔王5|
作品ページ|
勇者と魔王7
20050324